《目的》
寒天ゲルは時間とともに水分が遊離します。これを離しょう(本項では離水と表現)といいます。
和菓子の最中等は餡を包んだお菓子は餡から水分が遊離すると、皮に水分が吸収して、パリッとした良い食感がなくなります。この為、お菓子屋さんは寒天の硬さや粘り以外に、離水も重要なファクターとして意識しています(和菓子屋さんでは離水のことを「羊羹が泣く」とか「泣き」とかと呼びます)。
本試験では寒天の離水率について確認することとしました。
離水率はゲルの寒天濃度に逆比例する傾向があります(1)-(2)。この為、濃度の異なるゲルを作成し、離水率を比較することにしました。
離水率は寒天質中の硫酸基含有量にも逆比例する傾向があります(1)-(2)。糸寒天は硫酸基が多く、粉末寒天は硫酸基が少ないので、糸寒天と粉末寒天の離水率を比較することにしました。
《方法》
サンプルは以下の通り。
・糸寒天35号、糸寒天5号、粉末寒天S、粉末寒天M
・使用量は各々3.0g。ただし、粉末寒天Mは2.5gも実施。
・寒天は煮熟・冷却させてゲル化、一定時間放置後、離水率を算出しました。
・離水率算出方法は弊社測定法に寄ります。
・離水率はゼリー強度に逆比例する為(1)-(2)、ゼリー強度も確認しました。
《結果》
粉末寒天M(3g)で作成したゲルと、粉末寒天M(2.5g)で作成したゲルの離水率を比較しました。その結果、寒天濃度の低い2.5gで作成したゲルの方が、離水率は高い値となりました。この為、寒天濃度が低くなれば、離水しやすいと思われました。
離水率はゼリー強度に逆比例する傾向がありますが(1)-(2)、本試験ではそれを確認できませんでした。
ゼリー強度は粉末寒天の方が糸寒天よりも高い値となりましたが、離水率も高い傾向にありました。粉末寒天の方がゼリー強度は高いにも関わらず(1)-(2)、離水しやすいということです。粉末寒天の原料はオゴノリであり、糸寒天の原料はテングサである為、離水しやすさはゼリー強度よりも、原料に依存する傾向が大きく、テングサ原料である糸寒天の方が離水しにくいと思われました。
和菓子屋様は微妙な離水の違いを意識しています。今後も和菓子屋様のお役に立てるよう、データを収集していく予定です。
参考文献 1.松橋治郎 「寒天と心太 その奇妙な性質と効用」 『食品工業』
(株)光琳書院 Vol 50,No24,71-81,2007
2.林金雄.,岡崎彰夫「寒天ハンドブック」光琳書院(363-363,1970)
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