02 2021/08/04 伊豆大島海水温とテングサ生物量(伊豆大島)の関係
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【目的】
- テングサは1月〜3月にかけて胞子が岩礁に着床するが、この時期に海水温が高い(13℃〜15℃以上※)と胞子が岩礁に着床し難くなる。その結果、生物量が減少する傾向にある。一方で4月〜8月(または9月)にかけてはテングサ生長期である為、この時期に海水温が高いと生物量は増加しやすい。海水温のみでいえば、冬期は低く、春期〜夏期は高いこと(※1)が生長しやすい条件といえる。
- 2021年は全国的にテングサ入札会での出品量が減産しており、伊豆大島産テングサも同様である。この為、本稿では2020年と2021年の伊豆大島海水温を解析し、テングサ生物量との関係を確認した。今回の解析期間は1月1日〜7月31日とした。
【方法】
- テングサ生物量:東京都第1回入札会出品量を7月31日迄の伊豆大島産テングサの生物量として使用した。ただし、7月31日迄に採取されたテングサの一部は東京都第2回入札会でも出品される為、テングサ生物量との完全な相関関係はない。産地は伊豆大島全域(岡田地区、元町地区、波浮地区、泉津地区)。
- 海水温データ:「東京都島しょ農林水産総合センター」の「海の天気図」を参考に5日毎にピックアップした(※)。期間は1月1日〜7月31日。
※1日、5日、10日、15日、20日、25日;データ記録なしの場合は前後の日からデータ採取。
【解析】
- テングサ胞子が岩礁に着床すると考えられる1月〜3月は2020年と2021年で若干差は認められたが、ともに海水温が15℃以上と高かった(表1)。この為、胞子の着床条件は然程良好ではなかったと考えられる。
- テングサが生長すると考えられる4月〜7月の内、4月〜6月は2020年と2021年で大きな差は特に認められなかった(最大0.2℃;表1)。一方、7月は2021年の方が1.1℃高かった(表1)。この為、生長条件は2021年の方が2020年よりも若干良好であったといえる(※1)。
- 海水温のみで比較すれば、テングサ生育環境は2021年の方が2020年より良好と考えられた(※1)。
- 一方、テングサ生物量は現段階(2021.8.5)で7,500kgと前年比46%と大幅に減少した(2020年:16,350kg;表2)。この為、今回の生物量減少は海水温以外の要因が大きいと考えられた。
- 徳島県のテングサ生物量も2020年と比較して19%と大減産している(表2)。徳島県の海域では珪藻類(Eucampia)が大発生したことにより、海水の栄養塩が珪藻類に搾取され、栄養塩不足に陥り、結果テングサ生物量が大減産したとのこと。例年、徳島県のある地区では石灰藻類が多量にテングサに付着するが、今年(2021年)はあまり確認されなかった(目視確認のみ)。これは、珪藻類により栄養塩が不足し、テングサのみならず石灰藻類が生長できなかった可能性がある。伊豆大島産テングサでも石灰藻類の付着が例年よりあまり確認されなかった為(目視確認)、伊豆大島付近の海水の栄養塩不足の可能性が考えられた。
- 今後、栄養塩データも解析していくことで生物量減少の要因が把握できると思われる。
※1:生長条件における海水温上限については言及がなされていない。 今回の海水温データは全て25℃以下であった為、生長の妨げとなる程度の高海水温ではないと判断した。
(報告/常務 森田尚宏)
【表1.伊豆大島の平均海水温】
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