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てんぐさ入札会報告
毎年3月から10月にわたって行われるてんぐさ入札会の報告です。
てんぐさ入札会報告 令和6年(2024)
00 2024/04/09 2023年(令和5年)テングサ概況について
01 2024/03/14 静岡県第1回入札会
02 2024/07/11 静岡県第2回入札会
03 2024/07/12 城ヶ島第1回入札会
04 2024/07/19 愛媛県第1回入札会
05 2024/07/19 徳島県第1回入札会
06 2024/08/23 長崎県第入札会
07 2024/08/29 和歌山県入札会
08 2024/08/30 三重県入札会
09 2024/09/05 徳島県第2回入札会
10 2024/09/05 高知県入札会
11 2024/09/06 愛媛県入札会
12 2024/09/12 静岡県第3回入札会
13 2024/10/10 静岡県第4回入札会
14 2024/10/22 城ヶ島第2回入札会
15 2024/11/07 静岡県第5回入札会
16 2024/11/21 伊豆諸島産テングサ入札会(東京都第1回入札会)

00 2023年(令和5年)テングサ概況について

 テングサは寒天やトコロテンの原料となる重要な水産資源である。生育域は南北半球の温帯〜亜熱帯であり全国的に生育しているが、国内水産資源としてのテングサは千葉県から長崎県にかけての、いわゆる太平洋ベルト地帯で多く採取されている。採取されたテングサは各地域の漁協が主となって入札会が開催され、落札されていく。
 2023年の国内テングサ入札会は、3月9日の静岡県第1回入札会から始まり、11月16日の東京都第2回入札会をもって終了した。全国の主な入札会の合計出品量は123.0トン(表1)で、2022年の出品量と比較して86%と減産した(2022年全国入札量:143.7トン)。過去7年(2017年〜)で比較しても、2021年の129.5トンを下回り最低となった。
 入札会出品量と入札外数量を合計した全国生産量も268トン(表1;推定)となり、2022年と比較して80.9%と減産した(2022年全国生産量:331トン)。過去7年(2017年〜)で比較しても最低で、初めて300トン未満となった。
 全国で開催される入札会の中で、徳島県第1回入札会は年内最初の入札会である(全漁連主催の入札会において)。この為、本入札会は落札価格の相場を左右する重要な入札会である。しかし、2023年は400kg程度しか集荷されず開催中止となった。過去10年、減産しつつも徳島県第1回入札会は中止となったことはない。2023年は極めて異例のことであり、年間出品量も大減産するという懸念が発生した。この為、続く愛媛県入札会では購入競争が激化し、全国的な落札価格の高騰へと繋がった。
 生産量の多い千葉産テングサも8月以降に収穫量が激減し、年間生産量は100トン前後と前年比で70%程度と推定された。取引価格は、減産以外に「他地域からの需要の移行」、「燃料代・物価の高騰」といった要因も加わり、2023年途中から上昇した。ブランド銘柄である伊豆テングサ(静岡県産テングサ)も第1回入札会と第2回入札会で減産が続いた為、落札価格は高騰した(最終的な年間出品量は2022年と比較して増産)。
 全国的な減産の原因として、2017年8月から続く黒潮の大蛇行の影響が大きいと思われる。過去5年のテングサ生産量を確認すると、海域毎の特徴が確認されており、更に解析していく予定である。他にも、四国地域〜東海地域にかけての梅雨の長期化による収穫日数の減少が減産に拍車をかけたと考えられる(2023年は例年より9日早い梅雨入り(5月29日)であった)。
 テングサの生長には下記事項が必要である。良い方向へ移行していくことを期待したい。

@ 胞子着床時期(1月〜3月)に海水温が13℃(〜15℃)以下となること。
A 海水の栄養塩が豊富であること。
B テングサ生長期(4月〜6月)に海水温が上昇すること。
C テングサ採取時期(4月〜8月)に天候が良いこと。

【表1:全国の主な入札会出品量と全国生産量(1月1日〜12月31日)】

産地\年 令和5年
2023年
令和4年
2022年
令和3年
2021年
令和2年
2020年
令和元年
2019年
平成30年
2018年
平成29年
2017年
東京都 14.4 14.5 17.0 35.8 30.3 28.1 30.8
静岡県 43.5 37.5 44.9 36.4 45.5 64.5 85.6
三重県 3.8 3.2 1.4 2.6 3.7 8.3 11.0
和歌山県 9.9 11.2 13.6 14.4 18.9 15.9 13.8
徳島県 2.2 10.4 11.8 34.2 34.3 36.0 30.5
愛媛県 49.8 65.7 39.2 83.9 103.5 114.3 134.0
高知県 0.3 0.1 0.6 1.9 7.6 11.0 9.0
長崎県 1.1 1.1 1.0 1.8 1.6 1.3 3.3
上記産地計 123.0 143.7 129.5 211.0 245.4 279.4 318.0
全国生産量※1 268 331 313 429 457 411 471

(株)森田商店・調査より

※1:入札会出品量と入札会外数量(千葉県等)を合計した推定数量。

《外国産テングサ(2023.1.1〜2023.12.31)》

 2023年(1月〜12月)の総輸入量は1,450トンで(表2)、2022年の総輸入量と比較して略同量であった(2022年1,513トン;±5%以内の変化は略同じとして記載)。2017年からの7年間で確認しても、輸入量は略平均な値であった。
 韓国産テングサの2023年の輸入量は383トンであり、2022年の輸入量と比較して120%と増加した(2022年318トン)。急激な円安による輸入価格の高騰に加え、2024年の生産量が少ないと予想され、各業者が事前に輸入したと考えられる。輸入平均単価(※2)はこの影響を受けて、前年比106%となった。2017年からの7年間で確認すると、輸入量は過去2番目に多く、輸入平均単価は若干安くなっていた。
 モロッコ産テングサの2023年の輸入量は790トンと、2022年の輸入量と比較して90%と減少した(2022年は877トン)。急激な円安による輸入価格の高騰を懸念と、2022年輸入分が余剰在庫となり、輸入量が減少した可能性が考えられる。輸入平均単価は前年と略同値であった。2017年からの7年間で確認すると、輸入量は平均より若干多く、輸入平均単価は若干安くなっていた。
 2024年全期を通しての為替動向は不透明であるが、2023年から2024年にかけて急激な円安が進んでおり、今後もテングサの輸入価格は上昇する懸念がある。特に韓国産テングサは人件費の上昇と需要の集中が予想され、更なる高値の懸念がある。
 ※2:輸入平均単価:赤テングサ価格、水洗テングサ価格、晒テングサ価格を合計して算出。
 一般的に晒テングサは赤テングサより高い為、晒テングサの輸入量が増えると高値、赤テングサの輸入量が増えると安値となる。この為、必ずしも輸入平均単価が各テングサ価格を反映しているとはいえない。

【表2:テングサ輸入量(1月〜12月)】

2023年 2022年 2021年 2020年 2019年 2018年 平均
輸入総量 1,450 1,513 1,152 1,433 1,730 1,627 1,505
韓国 383 318 182 260 181 271 305
モロッコ 790 877 637 569 802 680 696

財務省貿易統計より(単位:トン)

(報告/社長 森田尚宏)

01 2024/03/14 静岡県第1回入札会

 3月中旬、静岡県第1回入札会が開催された(3月14日)。出品量は6,005kgと、昨年の同時期の出品量と比較して123%となった(2023年第1回入札会4,890s)。今回は年間5回開催される入札会の1回目であり、更に昨年採取されたテングサの為、必ずしも生産量が増加しているとは断言できない。それでも全国的な減産傾向の中では喜ばしいことである。
 東海地域(三重県、静岡県)に関しては、近年、僅かであるが入札会出品量は増産している(図1)。黒潮大蛇行(※1,図2)がこれまでの減産の原因であれば、東海地域に関しては黒潮大蛇行の影響が小さくなっているかもしれない(※2)。
 テングサの様相を確認する為、前日入りして各浜の保管されている倉庫を訪ねた。確認してみると、全体的に良好で晒テングサは等級相応に使用可能と思われた。トラ晒は十分綺麗に晒されていたし、青晒も十分青い晒となっていた。一部の青晒は「薄い青晒」+「黄晒」+「赤草」となっていた為、もう少し一様に晒されていれば、お客様により紹介しやすい。赤草も問題なく、アオ銘柄も然程アオの付着は目立たなかった。雨当3等銘柄も3等草(ドラクサ)の雨当たりというよりは1等草以外の雨当たりという様相で、赤3等銘柄よりも炊きやすそうであった。
 入札業者は6社、内Fax入札は1社であった。出品量に関しては昨年より増産しているが、相場は相変わらず微妙である。更に昨年確保できなかった業者は想定以上の高値入札をした為、結果としてかなり高騰してしまった。第1回入札会は年間相場の参考となる。今回の結果がどのように影響してくるか多少の懸念を残しつつ、今後の増産を期待して入札会は終了した。

(報告/社長 森田尚宏)
 

※1:黒潮大蛇行:本州南方の東経136度〜140度(潮岬付近)で北緯32度以南まで大きく蛇行する流路。
  ・気象庁HP:https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
  ・吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
 2006:黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.

※2:黒潮大蛇行の南下地点が潮岬付近から僅かに西に移動し、東海地域への黒潮大蛇行の影響が小さくなった可能性がある。

図1:東海地域の入札会出品量
 

図2:黒潮大蛇行概念図(※1、※2)
 

仁科海岸1
 

仁科海岸2
 

黄金崎1
 

夕方の黄金崎1
 

夕方の黄金崎2
 

夕方の黄金崎3
 

黄金崎に夕日が沈む
 

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02 2024/07/11 静岡県第2回入札会

 7月上旬、静岡県第2回入札会が開催された(7月11日)。出品量は6,777kgと、昨年の同時期の出品量と比較して104%と増産した(2023年第1回入札会6,495s)。7月迄の累計出品量は12,782kgとなり、2023年から僅かに増産に転じているようである(2019年;25,400kg、2020年;13,047kg、2021年;15,240kg、2022年;13,467kg、2023年;11,385kg)。静岡県入札会は年間5回開催予定の為、現段階では増産しているといえないが、全国的な減産傾向の中では喜ばしいことである。
 東海地域(三重県、静岡県)に関しては、近年、僅かであるが入札会出品量は増産している(図1)。また、今年(2024年)は遠州灘から西伊豆にかけてサクラエビが豊漁とのことである。こういったことから、この海域では黒潮大蛇行の影響が弱くなり水産資源が復活している可能性がある(図2、※1、※2)。
 テングサの様相は、いつも通り前日入りして各浜の保管されている倉庫を訪ねた。確認すると、全体的に良好でトラ晒は十分綺麗に晒されており、アオ晒は十分青く晒されていた。アカトラ晒も綺麗に晒されていており、トラ晒としても使用可能であった。赤草も問題なく、アカアオ銘柄やアオ銘柄も然程アオの付着は目立たなかった。
 入札業者は7社、内Fax入札は1社。出品量は昨年より僅かに増産しているものの、全国的には大幅に減産している。ブランドテングサの静岡県産テングサ(伊豆産テングサ)でも確保しなければならないことから、落札価格はかなりの高額となると予想された。実際、開票されると前回を上回る高値落札であった。次に続く愛媛県入札会は昨年よりも更に減産していて、こちらも高値が予想されている。この傾向は続くと考えられる為、落札業者・製造業者ともに2025年の方向性を早めに検討しなければならない。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:東海地域の入札会出品量
 

図2:黒潮大蛇行概念図
 

※1:黒潮大蛇行:本州南方の東経136度〜140度(潮岬付近)で北緯32度以南まで大きく蛇行する流路。
  ・気象庁HP:https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
  ・吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
 2006:黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.

※2:黒潮大蛇行の南下地点が潮岬付近から僅かに西に移動し、東海地域への黒潮大蛇行の影響が小さくなった可能性がある。

伊豆ジオパークの一つである仁科海岸
 

稲取漁港
 

稲取で集荷されたテングサ
 

須崎産テングサの改良
 

須崎で集荷されたテングサ
 

須崎・恵比寿島
 

稲取倉庫に飾られている海女さんのパネル
 

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03 2024/07/12 城ヶ島第1回入札会

 7月上旬、城ヶ島第1回入札会が開催された(7月12日)。出品量は1,814kgと、昨年の同時期の出品量と比較して212%と増産した(2023年第1回入札会855.3s)。これは、2023年の落札価格の高騰で採取意欲が高まった為とのことだが、生育量自体も増加しているのではと考えられる。同時期迄の出品量を2019年から比較すると、2023年から増産に転じて、少しずつ例年並みに戻ってきている様である(2019年;2,514kg、2020年;3,044kg、2021年;2,126kg、2022年;1,702kg、2023年;855.3kg)。
 地理的には三浦半島の南端で、伊豆半島や伊豆諸島より東、千葉県に近い位置である(図1)。伊豆諸島産テングサや千葉県産テングサの生産量は激減している為、城ヶ島での増産は特異的に感じる。
 黒潮流路は潮岬南部で南下する大蛇行流路と大蛇行しない非蛇行流路があり、更に非蛇行流路には「東海沖を東に直進し、八丈島の北を通過する非蛇行接岸流路」と「伊豆諸島近海で南に小さく蛇行して八丈島の南を通過する非蛇行離岸流路」とがある(図2;※1)。城ヶ島の増産と伊豆諸島・千葉県の減産は、この海域での黒潮流路に変化が発生した為かもしれない。
 城ヶ島産テングサはアラメの中にケグサが混合しているアラメ混である。アラメ混入率については毎年大きな変化は無いが、実際に集荷されている漁協倉庫を訪ねて確認した。結果は例年通りの良好な綺麗なアラメ混であった。
 入札業者は4社、内Fax入札は1社。上記の通り、城ヶ島産テングサはアラメ混であるが、アラメやアラメ混が出品される入札会は城ヶ島入札会以外では東京都入札会のみである。現段階では東京都入札会は殆ど集荷されておらず、アラメやアラメ混が期待できないことから、本入札会でアラメ混の購入競争が激化することが予想された。実際、入札価格は各業者とも昨年の最終回の落札価格を大幅に上回る高額で入札していた。現段階の状況を早々に製造業者にも連絡し、2025年の方向性を共に検討していかねばならない。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:城ヶ島の地理的関係(伊豆半島や伊豆諸島の東、千葉県に近い位置)
 

図2:本州南岸を流れる黒潮の典型的な流路
1:非蛇行接岸流路 2:非蛇行離岸流路 3:大蛇行流路
 

※1:https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
 

城ヶ島の岩礁@
 

城ヶ島の岩礁A
 

城ヶ島漁港
 

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04 2024/07/19 愛媛県第1回入札会

 愛媛県第1回入札会が昨年と同時期の7月19日に開催された。出品量は25,129kgと昨年と比較して64%と減産した(2023年7月14日;39,000kg)。同時期の出品量を2019年から比較しても最も少ない量である(2019年;82,966kg、2020年;68,342kg、2021年;31,093kg、2022年;52,505kg、2023年;39,000kg)。
 日振島の採取業者によれば、水温が高いことで冬場に胞子が岩礁に付着せず、生育量が減ったとのこと。水温が高いことは黒潮大蛇行に起因する可能性があるが、当初の予想では紀伊水道(徳島県と和歌山県の間)の方が強く影響を受けるのではと考えていた。これは黒潮大蛇行の南下地点が潮岬付近とされており、紀伊水道の方が近い為である(図1、※1)。しかし、実際は西方の豊後水道側の愛媛県の方が減産し、紀伊水道側の徳島県の生産量は若干増加していた(図2)。黒潮大蛇行の南下地点が潮岬付近から更に西へ移動しているのかもしれない。
 テングサ見本の確認は入札会当日に実施した。全体的に良好であったが、メリ(湿った状態)となっているテングサもあり、もう少し乾燥していれば更に良いと感じた。また、ある産地の「フケ銘柄」や「寄草銘柄」は雨アタリや異物が多く混入していたが、産地倉庫で現物を直接確認したところ、然程付着しておらず良好な状態であった。入札会の見本は、全体を代表できるテングサであるのが一番良いが、それがなかなか難しいのであろうと感じた。
 入札業者は7社。全国的な減産の中、数量の多い愛媛県産テングサは各業者ともに確保したいテングサである。この為、本入札会は昨年よりも更に高騰することが予想され、実際どの業者も相当な高額入札を検討している様子であった。一方で過剰な落札価格の高騰は、トコロテンの原価上昇に影響を与え、最終的には消費量が減ることとなる。入札価格と来期方針を悩み抜いて入札をしたが、結果は予想通りどの銘柄も相当高額となった。現相場では2025年テングサ価格はかなり高騰することとなり、今後の方向性について更に検討していく必要がある。

◎入札会終了後、日振島に移動して産地視察を実施
01 2024/07/20 テングサ産地視察(愛媛県・日振島)

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:黒潮大蛇行概念図
 

※1:黒潮大蛇行:本州南方の東経136度〜140度(潮岬付近)で北緯32度以南まで大きく蛇行する流路。この状態では紀伊水道(徳島県と和歌山県に挟まれた海域)が最も影響を受けると考えている。
・気象庁HP
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
・吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
2006:黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
 

図2:7月迄の入札会出品量(愛媛県・徳島県)
 

セントレアから出発
 

道後温泉(本館)
 

道後温泉(別館)
 

道後温泉(別館)テングサ見本で見付をする。

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05 2024/07/19 徳島県第1回入札会

 徳島県第1回入札会が7月19日に開催された。出品量は3,811.9kgと少なかった為、愛媛県と合同で実施することとなった。2019年から比較すると2021年から10,000kg以下となり激減しているが、昨年よりは増産している(2019年;21,866kg、2020年;22,959.5kg、2021年;4,377kg、2022年;5,014.2kg、2023年;0kg:図1)。
 当初の予想では徳島県産テングサはあまり成長せず、7月の集荷には間に合わないと予想していた。これは黒潮大蛇行の影響を直接受けると考えていた為である(黒潮大蛇行の南下地点が潮岬付近とされており、徳島県の沖合である紀伊水道が近い為;図2、※1)。一方で西方の豊後水道に位置する愛媛県の方が減産している為(図1)、黒潮大蛇行の南下地点が潮岬付近から更に西へ移動しているのかもしれない。
 徳島県産テングサの見本を確認すると、全体的によく乾燥しており、異物の付着も少なかった。ただし、ある銘柄のテングサはトリクサであったが、アオの付着が確認された為、相応の価格で入札をする必要があった。
 入札は愛媛県入札会終了してから30分後に開催された。入札業者は7社。愛媛県入札会の高騰を受け、本入札会は更に高騰することが予想された。実際、開票されると愛媛県入札会で希望していた量を落札できなかった業者が、かなりの高値で落札していった。予想はされたことであるが、過剰な落札価格の高騰は、トコロテンの原価上昇に影響を与え、最終的には消費量が減ることとなる。次回の入札価格と今後の方針について入念に検討しなければならない。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:7月迄の入札会出品量(愛媛県・徳島県)
 

図2:黒潮大蛇行概念図
 

※1:黒潮大蛇行:本州南方の東経136度〜140度(潮岬付近)で北緯32度以南まで大きく蛇行する流路。この状態では紀伊水道(徳島県と和歌山県に挟まれた海域)が最も影響を受けると考えている。
・気象庁HP
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
・吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹,
2006:黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
 

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06 2024/08/23 長崎県第入札会

 長崎県入札会が8月23日に開催された。出品量は936.5kgと昨年と比較して85%と減産した。2021年から1,000kg前後と出品量に大きな変動はないようにみえるが、2020年以前と比較するとかなり減産している(図1)。
 国産テングサの減産は黒潮大蛇行に起因する可能性が高いが、長崎県入札会で出品されるテングサは五島列島で採取されており(図2-1、図2-2)、黒潮から分離した対馬海流の影響を受ける海域と考えられる(図3)。一方で韓国・済州島とは近い距離に位置することから(図2-2)、済州島産テングサの生産量と関連している可能性がある。
 本入札会の出品量は少なく、昨年に続いてサンプルを送付して頂き、FAX入札することになった。サンプルは例年通りの様相で、マクサ以外にサルクサも出品された。これまでの傾向から入札価格は引き続き高騰すると考えられたが、実際の落札価格はそれを上回る高額落札であった。この結果が次回からの入札価格に大きく影響すると感じた。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:長崎県産テングサの入札会出品量
 

図2-1:長崎県産テングサの産地(五島・三井楽)
 

図2-2:長崎県産テングサの産地(五島・三井楽)と韓国・済州島の地理的位置
 

図3:日本近海の海流
海洋保安庁・海洋情報部HPより抜粋
 

https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN8/sv/teach/kaisyo/stream4.html
 

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07 2024/08/29 和歌山県入札会

 台風接近により、和歌山県入札会は当初の予定から一日遅らせて8月29日に開催された。2018年から減産続きであったが(図1)、今年は14,287kgと昨年と比較して145%と増産した(2023年8月18日;9,885.5kg)。ただし、93%は北部地区であり(13,320kg)、潮岬付近の南部地区は少ないままである。
 南部地区での減産(図2)は黒潮の大蛇行が大きく影響している可能性がある。これは黒潮が潮岬南部で南下することにより、潮岬南部で冷水塊が発生し、テングサの成長を抑制していると推測している。紀伊水道を挟んだ高知県でも減産が顕著であることからも潮岬南部で冷水塊が発生している可能性が高い。一方で和歌山県北部では増産に転じており(図2)、北部では黒潮大蛇行の影響が少なくなっていると推測している。
 入札会当日は予想より台風の影響が弱く、午前中に和歌山県漁連に入って出品されるテングサを確認した。北部地区は内湾傾向である為、テングサの質は柔らかいが、カキや異物は十分に除去されており綺麗であった。中部のある地区でも、これまでマクサとサルクサが混合していたが、今回は綺麗に分けられており、使い勝手が良いと感じた。サルクサが混合している地区もあったが、サルクサ混として購入・使用すれば問題ないであろう。和歌山県は南北に長く、海岸線も複雑である。この為、柔らかいテングサや硬いテングサ、サルクサ等様々なテングサが出品され、用途に応じて様々に使用可能な産地でもある(図3〜5)。
 入札業者は6社。内、Fax 入札は1社。落差価格は7月開催の愛媛県や徳島県・直前の長崎県が参考にされた為、依然高騰したが、高止まりの傾向も感じた。それでも高値相場は続いている為、来年のトコロテンや糸寒天の価格に強く影響を与えるのではと懸念された。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:和歌山県産テングサの入札会出品量
 

図2:和歌山県産テングサの入札会出品量(南部/北部)
 

図3:和歌山県産テングサ(マクサ)
 

図4:和歌山県産テングサ(サルクサ)
 

図5:和歌山県産テングサ(オニクサ)
 

和歌山城@
 

和歌山城A
 

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08 2024/08/30 三重県入札会

 三重県入札会が8月30日に開催された。出品量は3,755kgと昨年と略同量であった(2023年8月31日3,792kg)。
2014年〜2017年迄は8,000kg〜10,000kg出品されている為、その頃と比較するとかなり少ない(図1)。原因は2017年8月から始まった黒潮大蛇行の影響と考えられ、時期的にも一致している。ただし減産も2021年迄であり、この2年〜3年は3,000kg程度で安定している。黒潮大蛇行の影響が無くなったとは断言できないが、徐々に影響が小さくなった可能性がある。
 入札は昨年に引き続き、FAX入札となった。送付して頂いたサンプルを確認したところ、例年通りの綺麗なテングサで使い勝手が良いと感じた。三重県産テングサは和歌山県南部産テングサと性状が似ており(できあがるトコロテンは割合硬くなる)、和歌山県南部産テングサが少ない現在、希少価値のある産地ともいえる。ただ、ある地区のテングサは年々細くなっている印象を受け、実際トコロテンを製造するお客様も細くなっていると言っていた。海域の問題かと思われるが、この地区のテングサを好んで使用されているお客様もみえるので、以前のような成長を期待したい。
 入札業者は6社。三重県特有の性状を希望している業者や地産地消を謳っている業者は高値入札をしたと思われ、対応する銘柄は高額落札されていた。一方で、全体的にはどの業者も落札していたことから、入札価格は近接しており、ある程度高止まりし始めているとも感じた。各業者共に必要なテングサを確保できつつあるかもしれない。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:三重県産テングサの入札会出品量
 

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09 2024/09/05 徳島県第2回入札会

 徳島県第2回入札会が例年通り9月上旬に開催された。出品量は1,786kgで昨年の同時期と比較して82%と減産した。ただし昨年度は出品量が少なく1回のみの開催であった為、年間出品量では増産している(2024年年間出品量=5,598kg/2023年年間出品量=2,180kg)。2014年から年間出品量を比較すると、2023年の最小量から今年(2024年)は増産に転じた(図1)。
 紀伊水道西岸でみれば、南方の高知県産テングサは減産している(後述;10 2024.9.6高知県入札会)。北部(徳島県)で増産、南部(高知県)で減産しているといえる。対岸の和歌山県産テングサも同様の傾向で、北部は2023年の最小量から増産したが、南部では減産している(07 2024.8.29和歌山県入札会)。
 減産の原因は黒潮の大蛇行と考えられるが(※)、大蛇行の開始時期は2017年8月といわれている。徳島県産テングサが減産し始めたのは2020年から2021年にかけてであり、黒潮大蛇行とは若干のタイムラグがある(図1)。一方、東方の三重県産テングサは2017年から2018年にかけて減産しており、黒潮大蛇行の開始時期と一致している(図2)。詳細は別途、検討予定だが、黒潮大蛇行の影響範囲が徐々に東から西へ移行している可能性がある。増産に転じた時期も三重県(2022年)と徳島県・和歌山県(2024年)で異なっていることからも推測される。
 入札会場には前日入りしてテングサの様相を確認した。全体的に綺麗に選別されており、良質な寒天質が抽出されそうであった。一部、夏草の混入もあるようで、カキやフケの付着も少し確認されたが、全国的に出品量が少ない現在、採取して頂けることは有り難いことである。ただ、ある南部の銘柄のテングサは例年よりも細くなっていた。三重県のある銘柄も同様に細くなっていた為、何か共通する海域の要因があるかもしれない。
 入札業者は7社、内FAX入札は1社であった。これまで、高値入札が続いていたが、和歌山県入札会から高止まりも感じられた。各業者共に徐々にテングサを確保し、高値購入を回避し始めていると思われた。実際、落札業者は多岐に渡っており、入札価格も近接しているようであった。それでも高値には変わらないので、来年販売価格を考えると頭の痛いところである。

(報告/社長 森田尚宏)
 

※黒潮が潮岬南部で大蛇行することにより冷水塊が発生、テングサの成長に影響を及ぼしている可能性がある。
・気象庁HP
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html

図1:徳島県産テングサの入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
黒潮大蛇行開始から減産までにタイムラグがある。
 

図2:三重県産テングサの入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
黒潮大蛇行開始後、減産している。
 

徳島県漁連:気持ちの良い青空。
 

徳島県漁連:テングサ保管場
 

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10 2024/09/05 高知県入札会

 高知県入札会が例年通り9月上旬に開催された。出品量は86.1kgと昨年の同時期と比較して34%と減産した。(2023年出品量=253kg)。2014年から確認すると、2019年迄は10,000kg前後で推移していたが、2019年から2020年にかけて急激に減産していることが分かる(図1)。
 この減産時期は対岸の和歌山県南部産テングサと同時期であり(図2)、徳島県よりは早いが(2020年〜2021年)、三重県よりは遅い(三重県:2017年〜2018年)。徳島県第2回入札会の項でも記載したが(09 2024.9.5徳島県第2回入札会)、黒潮大蛇行の影響範囲が徐々に東から西へ移行している可能性が考えられる。
 入札会場には前日入りしてテングサの様相を確認した(出品量が少ない為、徳島県入札会と合同で実施)。出品される銘柄は晒テングサ、赤テングサ、サルクサ、フノリ、六角(オニクサの別称)と少ないながらも多岐に渡っている。テングサ自体も綺麗に黄晒になっていたり、異物が除去されていたりと、こちらも使い勝手が良さそうである。今後、増産されていくことを期待したい。
 入札業者は6社、内、FAX入札は1社であった。本入札会は徳島県入札会と同時開催されたことにより、入札傾向も似ていた。落札価格は高値落札ではあったが、こちらも高止まりが感じられ、入札価格も近接しているようであった。この傾向が継続されつつ、明日の愛媛入札会が開催されると思われた。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:高知県産テングサの入札会出品量
 

図2:和歌山県南部産テングサの入札会出品量
 

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11 2024/09/06 愛媛県入札会

 愛媛県入札会が9月上旬に開催された。出品量は6,515kgと昨年の同時期と比較して60%と減産した(2023年出品量=10,773kg)。年間累計出品量も31,644kgで昨年と比較して64%と減産した(2023年年間累計出品量=49,773kg)。
 2014年には160,000kgあった出品量も年々減産して2020年には100,000kg以下、2023年から50,000kg以下となっている(図1)。全国的な減産は黒潮大蛇行に起因する可能性が高く、愛媛県産テングサの減産もその影響を受けていると考えられる。ただ減産は黒潮大蛇行以前より始まっていることから(図1)、それ以外の要因も起因していると考えられる。今年の7月に日振島のテングサ産地へ視察に伺ったが(※)、地元の方々も海に変化を感じており、南方系の魚が増えたとのことであった。
 テングサの様相は当日に漁協に入って確認した。今回出品されるテングサは、夏期に採取されたテングサが多い為、カキの混入が多い傾向になる。それでも選別されている銘柄は、然程カキの付着が確認されず良好であった。減産している中、採取業者の方々は自宅で使用する分まで出品してくれたとのことである。非常に有り難いことである。寄草はカキの付着が目立ったが、そのような俵の数量を事前に教えて頂いたので、それを加味してテングサを見付けることができた。晒テングサも綺麗に黄色に晒されており、異物も少なく良質であった。
 入札業者は7社、内、FAX入札は1社であった。本入札会は徳島県入札会・高知県入札会の翌日に開催された。この為、入札傾向もそのまま移行された感があり、落札価格は引き続き高値落札ではあったが、高止まりしているようであった。また前回の愛媛県入札会で落札した業者は入札価格を控えめにしたと思われた。
 本入札会は全漁連主催の入札会としては最後である。帰りの飛行機の都合で早めに退出させて頂いたが、全漁連・各漁連/漁協に感謝すると共に、1年間ともに入札してきた業者仲間と健闘を讃え合いたい。

(報告/社長 森田尚宏)
 

※:2024/07/20テングサ産地視察(愛媛県・日振島)

図1:愛媛県産テングサの入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
黒潮大蛇行開始より以前から減産している。
 

夕方の道後温泉(飛鳥の湯)
 

 道後温泉(飛鳥の湯)の休憩場
 

道後温泉(飛鳥の湯)のお茶菓子
坊ちゃんにでてくるお茶菓子そのまま。
 

道後温泉(飛鳥の湯)の休憩場
 

傾いた太陽が道後温泉を照らす。
 

愛媛県漁協前・港と船が青空に映える。
 

出品されるテングサの見本
 

松山空港のオレンジジュースタワー。かんきつ王国・愛媛県
 

松山空港のみきゃんちゃん
 

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12 2024/09/12 静岡県第3回入札会

 9月上旬、静岡県第3回入札会が開催された(9月12日)。出品量は7,691kgと、昨年の同時期の出品量と比較して91%と減産した(2023年第3回入札会8,469s)。一方で9月迄の累計出品量は20,473kgとなり、2023年より僅かに増産している(2023年;19,854kg)。静岡県入札会は年間5回開催予定の為、現段階では増産しているといえないが、全国的な減産傾向の中では喜ばしいことである。
 2014年から確認すると2016年〜2017年にかけて大幅に減産している(図1)。この時期は黒潮大蛇行の開始時期(2017年8月)よりも早い為、黒潮大蛇行以外の要因もあると思われた。2018年からの減産は黒潮大蛇行の影響と考えられるが、緩やかな減産の後、生産量は安定している為、そこまで関与していないかもしれない。
 伊豆産テングサはブランドテングサとして有名であるが、西伊豆地域と東伊豆地域で様相・性状が異なる。西海岸はネバリが強くなるケグサであり、東海岸は硬くなりやすい太いテングサである。今回、西伊豆地域のネバリのあるテングサは数量が纏まっており、事前から購入競争が熾烈になると思われた。また東伊豆地域の太いテングサは、他地域では東京都産テングサのみの生産の為、こちらも事前から購入競争が熾烈になると思われた。テングサの様相は前日から伊豆に入って確認させて頂いたが、どの産地もカキが綺麗に除去された晒テングサや赤テングサであった。非常に使いやすく、有り難いテングサではある一方で、やはり購入競争が熾烈になる懸念があった。
 入札業者は6社、内Fax入札は2社。出品量は昨年より僅かに増産しているものの、全国的には大幅に減産している。更に上記の理由で購入競争が熾烈になると思われ、ブランドテングサであることも重なり落札価格はかなりの高額となると予想された。実際、開票されるとかなりの高値落札となり、予想を大幅に上回った。四国入札会で一旦は落ち着きをみせたかに思われたが、現段階で必要な業者はかなり高額入札をすると思われた。残る静岡県入札会と東京都入札会の相場がかなり懸念された結果であった。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:静岡県産テングサの入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
黒潮大蛇行開始より以前から減産している。
 

特徴的な岩稜の黄金崎
 

雲見海岸へと続く彫刻ロード@。彫刻が至る所に。
 

雲見海岸へとつづく彫刻ロードA。またまだ夏の雲が湧き上がる。
 

彫刻ロードB。雲見海岸が近くなる。
 

雲見海岸。内湾系であるが複雑な海岸。
 

仁科・沢田公園。複雑な地形と広がる碧い海。
 

仁科・堂ケ島海岸。断崖は海底まで続いているのか。
 

須崎・テングサ保管庫。テングサ選別中。
 

須崎・テングサ保管庫。出品前のテングサ。
 

須崎・テングサ保管庫。倉庫の向こうに須崎の海が広がる。
 

須崎・恵比寿島
 

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13 2024/10/10 静岡県第4回入札会

 10月中旬、静岡県第4回入札会が開催された(10月10日)。出品量は7,852kgと、昨年の同時期の出品量と比較して75%と減産した(2023年第4回入札会10,408s)。一方で10月迄の累計出品量は28,325kgとなり、昨年と比較して僅かに減産しているのみであった(2023年;30,262kg)。静岡県入札会は年間5回開催予定の為、現段階では増産か減産かは断定できない。しかし、昨年並みと予想される為、全国的な減産傾向の中では喜ばしいことである。
 2014年からの生産量を確認すると2017年から大幅に減産している(図1)。この時期は黒潮大蛇行の開始時期(2017年8月)と略同時期の為、黒潮大蛇行が影響していると考えられる。一方で2020年からは生産量は安定している為、近年は黒潮大蛇行の影響が小さくなっている可能性がある(黒潮大蛇行の南下点が潮岬より西に移動しているかもしれない)。
 現地で実際に確認してみると、西伊豆産テングサは綺麗に晒されており、またヨリクサにおけるカキの付着量も少なかった。ネバリのある良質なテングサと判断され、数量も纏まっている為、今回も購入競争が熾烈になると思われた。東伊豆産テングサはアラメに近い様相であり、アラメ(東京都産テングサ)の完全な代用とはならなくとも、十分に使用可能であると思われた。今年はアラメ(東京都産テングサ)の生産量が少ない為、こちらも購入競争が熾烈になると思われた。
 入札業者は6社。昼前に入札会場入りし、サンプルで最終確認して入札実施した。上記理由により、購入競争が熾烈になると思われたが、実際開票されると、やはり今回も予想を大幅に上回った金額で大半が落札された。全体的なテングサの生産量が少ないことは間違いないが、あまりの高額では需要が落ちてしまう。我々仕入業者は相場を鑑みながら、自社の在庫量や市場の需要も視野に入れて入札していかなければならない。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:静岡県産テングサの入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
黒潮大蛇行開始と略同時期に減産している。
 

夕暮れの浮島海岸@
 

夕暮れの浮島海岸A
 

夕暮れの浮島海岸B
 

浮島海岸の向こうに仁科の海岸。
 

岩壁に夕日が当たる。
 

太陽が沈んでいく。
 

須崎海岸の柱状節理。
 

海の見える休憩場所。
 

ジブリに出てきそうな爪木埼灯台。
 

爪木埼灯台と羊雲。
 

風の強い爪木崎(稲取方面)。
 

風の強い爪木崎(大島方面)。
 

海岸に降りてみる(爪木崎)。
 

陽光が海に輝く(爪木崎)。
 

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14 2024/10/22 城ヶ島第2回入札会

 10月下旬、城ヶ島第2回入札会が開催された(10月22日)。出品量は1,363kgと、昨年の同時期の出品量と比較して140%と増産した(2023年第2回入札会973kg)。年間累計出品量も3,177kgとなり、昨年と比較して増産した(2023年;1,828kg)。全国的な減産傾向の中で喜ばしいことである。
 経時的に見れば、2018年から2023年迄減産し続け(図1;2018年を特異的とした場合)、今年(2024年)増産に転じている。城ヶ島産テングサは生産量が他地域よりも少なく、少しの変動がグラフには大きく現れてしまう為、生産量の推移は慎重に検討しなければならない。しかし、黒潮大蛇行が開始された翌年より減産していることから(黒潮大蛇行の開始時期2017年7月→減産開始時期2018年)、黒潮大蛇行に伴い、城ヶ島付近の潮流も変化し、結果として減産した可能性がある。一方で、今年増産に転じたのは、この地域の潮流が再度変化した始めた可能性がある(黒潮大蛇行の南下点が潮岬より西に移動し、それに伴い城ヶ島潮流が変化した可能性がある)。地理的に近い千葉県や東京都(伊豆諸島)の生産量とは推移が異なっているのは(図2、図3)、伊豆半島と房総半島に囲まれており、潮流が異なっている為ではないか。
 テングサの様相は当日に会場入りして確認した。やはり夏草ということでカキの付着が確認されたが、例年よりアラメ(太いテングサ)の含有量が多かった。今年は特にアラメ(東京都産テングサ)の生産量が少ない為、城ヶ島産テングサは希少価値のあるテングサである。
 入札は15時を札締めとして開催された。入札業者は4社。内、FAX入札は1社。上記の通り、今年はアラメの生産量が少ない為、事前から購入競争がかなり熾烈になると考えられた。実際開票されると、やはり今回も予想を大幅に上回った金額で落札され、11月に開催される東京都産テングサの入札価格に大きく影響を与えると思われた。良質なテングサから良質なトコロテンを製造していくことは、トコロテンに対するイメージアップに繋がっていく。しかし、過剰な価格上昇は需要縮小へと繋がる為、そのバランスが重要であろう。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:城ヶ島産テングサの入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
2018年を特異的とすれば、大蛇行開始時(2017年)から2023年にかけて減産している。
 

図2:城ヶ島の地理的関係
伊豆諸島、千葉県に近いが伊豆半島と房総半島に囲まれており潮流が異なっている可能性がある。
 

図3:入札会出品量比較(東京都/千葉県/城ヶ島)
赤線:黒潮大蛇行開始時
比較の為、城ヶ島の入札会出品量を×10とした。
 

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15 2024/11/07 静岡県第5回入札会

 11月上旬、静岡県第5回入札会が開催された(11月7日)。出品量は11,929.2kgと昨年の同時期の出品量と比較して90%と減産した(2023年第5回入札会10,408s)。本入札会で今年の静岡県入札会は終了、年間累計出品量は40,254.2kgとなった。昨年と比較して93%となったが(2023年;43,498.3kg)、他地域と比較すると減産度合いは低く、全国的な減産傾向の中では喜ばしいことである。
 2014年からの生産量を確認すると2017年から大幅に減産している(図1)。この時期は黒潮大蛇行の開始時期(2017年8月)と略同時期の為、黒潮大蛇行が影響していると考えられる。一方で2019年からは生産量は安定している為、近年は黒潮大蛇行の影響が小さくなっている可能性がある(黒潮大蛇行の南下点が潮岬より西に移動しているかもしれない)。
 現地で実際に確認してみると、西伊豆産テングサは綺麗に晒されており、ヨリクサに関してもカキの付着量も少なかった。銘柄によっては赤の部分が多く残っている俵もあったので、もう少し晒加工がなされていれば有り難いと思った(または銘柄変更がわかりやすいかもしれない)。全体的にはネバリのある良質なテングサと判断され、数量も纏まっている為、今回も購入競争が熾烈になると思われた。
 東伊豆産テングサはアラメに近い様相のテングサが多く、アラメ(東京都産テングサ)の完全な代用とはならなくとも、十分に使用可能である。気になる点としては、例年、北部地区の方が少し太い傾向であったのに対し、今年は南部地区の方が少し太い傾向になったことである。海流が変化している可能性もあるが、これに関しては安易に判断せず、経時的によく観察した方がよいであろう。若干カキの付着が多い地区もあったが、これは地形的な要因が大きいと思われる。いずれにしても今年はアラメ(東京都産テングサ)の生産量が少ない為、東伊豆産テングサも購入競争が熾烈になると思われた。
 入札業者は7社。昼前に入札会場入りし、サンプルで最終確認して入札実施した。上記理由により、購入競争が熾烈になると思われたが、実際開票されると、やはり前回同様の高額価格で大半が落札された。全体的なテングサの生産量が少ないことは間違いないが、あまりの高額では需要が落ちてしまう。我々仕入業者は相場を鑑みながら、自社の在庫量や市場も視野に入れて入札していきたい。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:静岡県産テングサの入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
黒潮大蛇行開始と略同時期に減産している。
一方で2019年からは比較的安定している。
 

仁科・枯野公園@
 

仁科枯野公園A
 

夕暮れの仁科・枯野公園
 

夕暮れの沢田公園@
 

夕暮れの沢田公園A
 

仁科の海に太陽が沈む@
 

仁科の海に太陽が沈むA
 

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16 2024/11/21 伊豆諸島産テングサ入札会(東京都第1回入札会)

 11月後半、伊豆諸島産テングサの入札会(東京都入札会)が開催された(11月21日)。例年は2回/年〜3回/年開催されるが、今年は出品量が少ない為、本入札会の1回で終了した。出品量は2,713kgであり、年間累計出品量も同じく2,713kgとなった。結果、昨年の年間累計出品量と比較すると22%と大減産した(2023年年間累計出品量;12,392.8s)。
 2014年からの生産量を確認すると減産は2021年から始まっており、今年は特に減産している(図1)。全国的な減産の一因として、黒潮大蛇行があげられ、伊豆諸島産テングサの減産も該当する可能性がある。
 ただし、黒潮大蛇行の開始時期は2017年8月であり、伊豆諸島産テングサの減産時期とはタイムラグがある(図1)。伊豆諸島付近には2種類の海流が発生している為(図2;1.非蛇行接岸流路/2.非蛇行離岸流路)、黒潮大蛇行が直接影響を与えたのではなく、黒潮大蛇行の変化により、伊豆諸島付近の海流も変化し、生育が影響された可能性がある。
 出品されるテングサは当日会場入りして確認した。伊豆諸島産テングサはアラメが主体で、本入札会以外では城ヶ島入札会のみで出品される希少なテングサである。できあがるトコロテンも硬めの触感になる為、減産したとはいえ、出品されるのは有り難い。青混や荒混といった銘柄もあったが、然程アオが含有していなかったり、割合アラメが多かったりと問題なく使用可能と判断できた。ケグサ銘柄のテングサも、太くしっかりしておりアラメに近い様相であった。
 入札業者は7社。上記にあるように東京都産テングサはアラメ主体で、現在、非常に希少価値のあるテングサである。これまでの入札会の傾向も考慮すると、やはり落札値は相当高騰すると予想された。高額なテングサは市場縮小の一因となる為、本入札会は非常に有り難いと思いつつ、別テングサへの移行も視野にいれて入札した。他業者もそのような状況であった可能性があり、例年参加されている業者の内、1業者は欠席されていた。実際、開票されると、予想通り過去最高とも思われる価格で殆どの銘柄が落札された。

(報告/社長 森田尚宏)
 

図1:伊豆諸島産テングサ(東京都産テングサ)の入札会出品量
赤線:黒潮大蛇行開始時。
黒潮大蛇行開始と減産時期にタイムラグがある。
 

図2:本州南岸を流れる黒潮の典型的な流路
1:非蛇行接岸流路 2:非蛇行離岸流路 3:大蛇行流路
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/kuroshio.html
 

伊豆諸島産テングサ(東京都産テングサ)入札会@
 

伊豆諸島産テングサ(東京都産テングサ)入札会A
 

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