毎年3月から10月にわたって行われるてんぐさ入札会の報告です。
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00 2023年(令和5年)テングサ概況について
テングサは寒天やトコロテンの原料となる重要な水産資源である。生育域は南北半球の温帯〜亜熱帯であり全国的に生育しているが、国内水産資源としてのテングサは千葉県から長崎県にかけての、いわゆる太平洋ベルト地帯で多く採取されている。採取されたテングサは各地域の漁協が主となって入札会が開催され、落札されていく。
2023年の国内テングサ入札会は、3月9日の静岡県第1回入札会から始まり、11月16日の東京都第2回入札会をもって終了した。全国の主な入札会の合計出品量は123.0トン(表1)で、2022年の出品量と比較して86%と減産した(2022年全国入札量:143.7トン)。過去7年(2017年〜)で比較しても、2021年の129.5トンを下回り最低となった。
入札会出品量と入札外数量を合計した全国生産量も268トン(表1;推定)となり、2022年と比較して80.9%と減産した(2022年全国生産量:331トン)。過去7年(2017年〜)で比較しても最低で、初めて300トン未満となった。
全国で開催される入札会の中で、徳島県第1回入札会は年内最初の入札会である(全漁連主催の入札会において)。この為、本入札会は落札価格の相場を左右する重要な入札会である。しかし、2023年は400kg程度しか集荷されず開催中止となった。過去10年、減産しつつも徳島県第1回入札会は中止となったことはない。2023年は極めて異例のことであり、年間出品量も大減産するという懸念が発生した。この為、続く愛媛県入札会では購入競争が激化し、全国的な落札価格の高騰へと繋がった。
生産量の多い千葉産テングサも8月以降に収穫量が激減し、年間生産量は100トン前後と前年比で70%程度と推定された。取引価格は、減産以外に「他地域からの需要の移行」、「燃料代・物価の高騰」といった要因も加わり、2023年途中から上昇した。ブランド銘柄である伊豆テングサ(静岡県産テングサ)も第1回入札会と第2回入札会で減産が続いた為、落札価格は高騰した(最終的な年間出品量は2022年と比較して増産)。
全国的な減産の原因として、2017年8月から続く黒潮の大蛇行の影響が大きいと思われる。過去5年のテングサ生産量を確認すると、海域毎の特徴が確認されており、更に解析していく予定である。他にも、四国地域〜東海地域にかけての梅雨の長期化による収穫日数の減少が減産に拍車をかけたと考えられる(2023年は例年より9日早い梅雨入り(5月29日)であった)。
テングサの生長には下記事項が必要である。良い方向へ移行していくことを期待したい。
@ 胞子着床時期(1月〜3月)に海水温が13℃(〜15℃)以下となること。
A 海水の栄養塩が豊富であること。
B テングサ生長期(4月〜6月)に海水温が上昇すること。
C テングサ採取時期(4月〜8月)に天候が良いこと。
【表1:全国の主な入札会出品量と全国生産量(1月1日〜12月31日)】
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(株)森田商店・調査より
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※1:入札会出品量と入札会外数量(千葉県等)を合計した推定数量。
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《外国産テングサ(2023.1.1〜2023.12.31)》
2023年(1月〜12月)の総輸入量は1,450トンで(表2)、2022年の総輸入量と比較して略同量であった(2022年1,513トン;±5%以内の変化は略同じとして記載)。2017年からの7年間で確認しても、輸入量は略平均な値であった。
韓国産テングサの2023年の輸入量は383トンであり、2022年の輸入量と比較して120%と増加した(2022年318トン)。急激な円安による輸入価格の高騰に加え、2024年の生産量が少ないと予想され、各業者が事前に輸入したと考えられる。輸入平均単価(※2)はこの影響を受けて、前年比106%となった。2017年からの7年間で確認すると、輸入量は過去2番目に多く、輸入平均単価は若干安くなっていた。
モロッコ産テングサの2023年の輸入量は790トンと、2022年の輸入量と比較して90%と減少した(2022年は877トン)。急激な円安による輸入価格の高騰を懸念と、2022年輸入分が余剰在庫となり、輸入量が減少した可能性が考えられる。輸入平均単価は前年と略同値であった。2017年からの7年間で確認すると、輸入量は平均より若干多く、輸入平均単価は若干安くなっていた。
2024年全期を通しての為替動向は不透明であるが、2023年から2024年にかけて急激な円安が進んでおり、今後もテングサの輸入価格は上昇する懸念がある。特に韓国産テングサは人件費の上昇と需要の集中が予想され、更なる高値の懸念がある。
※2:輸入平均単価:赤テングサ価格、水洗テングサ価格、晒テングサ価格を合計して算出。
一般的に晒テングサは赤テングサより高い為、晒テングサの輸入量が増えると高値、赤テングサの輸入量が増えると安値となる。この為、必ずしも輸入平均単価が各テングサ価格を反映しているとはいえない。
【表2:テングサ輸入量(1月〜12月)】
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財務省貿易統計より(単位:トン)
(報告/社長 森田尚宏)
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01 2024/03/14 静岡県第1回入札会
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3月中旬、静岡県第1回入札会が開催された(3月14日)。出品量は6,005kgと、昨年の同時期の出品量と比較して123%となった(2023年第1回入札会4,890s)。今回は年間5回開催される入札会の1回目であり、更に昨年採取されたテングサの為、必ずしも生産量が増加しているとは断言できない。それでも全国的な減産傾向の中では喜ばしいことである。
東海地域(三重県、静岡県)に関しては、近年、僅かであるが入札会出品量は増産している(図1)。黒潮大蛇行(※1,図2)がこれまでの減産の原因であれば、東海地域に関しては黒潮大蛇行の影響が小さくなっているかもしれない(※2)。
テングサの様相を確認する為、前日入りして各浜の保管されている倉庫を訪ねた。確認してみると、全体的に良好で晒テングサは等級相応に使用可能と思われた。トラ晒は十分綺麗に晒されていたし、青晒も十分青い晒となっていた。一部の青晒は「薄い青晒」+「黄晒」+「赤草」となっていた為、もう少し一様に晒されていれば、お客様により紹介しやすい。赤草も問題なく、アオ銘柄も然程アオの付着は目立たなかった。雨当3等銘柄も3等草(ドラクサ)の雨当たりというよりは1等草以外の雨当たりという様相で、赤3等銘柄よりも炊きやすそうであった。
入札業者は6社、内Fax入札は1社であった。出品量に関しては昨年より増産しているが、相場は相変わらず微妙である。更に昨年確保できなかった業者は想定以上の高値入札をした為、結果としてかなり高騰してしまった。第1回入札会は年間相場の参考となる。今回の結果がどのように影響してくるか多少の懸念を残しつつ、今後の増産を期待して入札会は終了した。
(報告/社長 森田尚宏)
※1:黒潮大蛇行:本州南方の東経136度〜140度(潮岬付近)で北緯32度以南まで大きく蛇行する流路。 ・気象庁HP:https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/ kuroshio.html ・吉田隆・下道保直・林王弘道・横内克巳・秋山秀樹, 2006:黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準.海の研究,15,499-507.
※2:黒潮大蛇行の南下地点が潮岬付近から僅かに西に移動し、東海地域への黒潮大蛇行の影響が小さくなった可能性がある。
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図1:東海地域の入札会出品量
図2:黒潮大蛇行概念図(※1、※2)
仁科海岸1
仁科海岸2
黄金崎1
夕方の黄金崎1
夕方の黄金崎2
夕方の黄金崎3
黄金崎に夕日が沈む
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