毎年6月から10月にわたって行われるてんぐさ入札会の報告です。
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00 2010/04/10 平成21年まとめ
01 2010/06/16 静岡県第1回入札会
02 2010/06/17 東京都第1回入札会
03 2010/06/23 徳島県第1回入札会
04 2010/07/02 愛媛県第1回入札会
05 2010/07/09 三重県第1回入札会
06 2010/07/14 静岡県第2回入札会
07 2010/07/29 神奈川県城ヶ島漁協第1回入札会
08 2010/08/04 長崎県漁連第1回入札会
09 2010/08/11 三重県第2回入札会
10 2010/08/11 和歌山県第1回入札会
11 2010/08/18 静岡県第3回入札会
12 2010/08/19 東京都第2回入札会
13 2010/08/31 徳島県第2回入札会
14 2010/09/08 高知県第1回入札会
15 2010/09/10 愛媛県第2回入札会
16 2010/09/15 静岡県第4回入札会
17 2010/10/07 神奈川県城ヶ島漁協第2回入札会
18 2010/10/20 静岡県第5回入札会
19 2010/10/21 東京都第3回入札会
20 2010/11/17 静岡県第6回入札会
21 2010/11/22 平成22年度(平成22.4〜平成22.12)てんぐさ概況
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00 2010/04/10 平成21年度(H21.4〜H22.3) てんぐさ概況
全国のてんぐさ入札(生産)量
以下の表は、平成21年までの年別てんぐさ生産数量(入札数量+入札外数量)です。
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(単位:トン)株式会社 森田商店 調べ 2010/3/31
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平成21年度(平成21.4〜平成22.3)の国内てんぐさは平成21年11月25日、静岡県第6回入札会に仁科浜9,900kgが出品された後、さらに年を越して22年3月までに仁科浜19.6トン、土肥漁協八木沢地区が24.8トン取引され、すべて終了した。
結果、平成21年度の全国生産量は558トン、前年対比約17%減、一昨年対比約40%減の大幅な減産となった。
これは過去10年間(平成12〜21年)の最低年であった平成15年の537トンと並ぶ数字である。
この原因は、主に以下の3つが考えられる。
@ 前年からの価格低迷による生産意欲の減退
A 平成21年の春先から水温の不適による生育不良
B 収穫期(6月〜8月上旬)の長雨による採取不能
特にこの傾向は東京都伊豆諸島、静岡県伊豆半島に見られ、この地域での後半8月以降の入札会では、数量不足により前半7月までの入札会に比較して価格が20%〜30%上昇した。
一方、輸入は平成21年では1,152トンとなり平成20年の1,172トン、平成19年の1,316トンと逐次、減少した。
また、昨春から懸案となっていた韓国天草の自国滞貨状況は改善されず、昨年の夏以降盛んに日本へ出荷要望が天草問屋始め、海産物の扱い業者、寒天の製造業者へ寄せられた。その影響か、日本の韓国からの輸入天草は平成20年199トンに対し平成21年は276トンと輸入天草減少の中で増えた。今年の冬(平成21年12月〜平成22年2月)に韓国寒天メーカーが自国で消費したのは在庫天草の一部にとどまり、前年同様、韓国内の滞留在庫が解消されるまでにはいかなかったといえる。ちなみに天草輸入のトップはモロッコの473トン(平成21年)である。
また、日本国内の天然寒天製造に関しては平成22年も2月は昨年以上に曇りや雨の天気が続き気温も高めに推移した。よって長野地区の角寒天、岐阜地区の細寒天の製造は2年続きの製造日数短縮となり天草消費は昨年よりさらに約5%減で700トンと推定される。
日本国内の景気はまだデフレ傾向から縮み志向にあり、昨年のような生産量であれば価格上昇もあり得るが、今後国内の天草生育状況、夏場のところてんの売れ行き、韓国の天草状況など、注視していく必要がある。
(報告/(株)森田商店社長 森田庄次)
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01 2010/06/16 静岡県第1回入札会
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例年通り、6月中旬に静岡県第1回入札会が開催された。これから11月まで全6回の入札が予定されている。今回の入札量は810本,20,200kgで、同時期の昨年度の入札量よりも多かった(昨年の入札量は377本、9425kg)。しかし総じて生産量は少なくなるのではとの見方が強く、漁協関係者は入札値の下落と採取業者の高齢化が影響を与えているとのことであった。
伊豆には前日入りし、いつも通り各漁協をまわって現状確認をした。採取業者の話しでも、やはり今年度は生息している天草自体が少なく、2回目以降に予定される出品量も実際の所はどうなるか不明瞭である。天草の状態は浜毎に異なっているが、概ね今年度は青が付着している天草が多く、良質な天草は割合的には少なく感じられた。冬の水温が高かった為だろうか。いずれにしても、こういった点から業者が買いに走る可能性も考えられた。ただし潮の流れが速いところは青の付着が少ない。
購入量と購入価格はこれまでの傾向と市場動向から事前に考えてはいるが、現物を見て最終的に決定していく。今回、確認した中では等級が異なっていても、似ていると感じられた天草もあった。
入札は午後13:30より行われた。業者は8社であり、内1社がFAX入札であった。入札値はやはり昨年よりも若干買いに走った感がした。採取量が減少しているが、天草業界に活気が戻っていくことを期待して静岡県入札会は始まった。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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美しい白浜海岸
天草粗改良
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02 2010/06/17 東京都第1回入札会
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例年通り、6月中旬に東京都漁連水産物流センターで東京都第1回入札会が開催された。今年度の入札本数は340本で昨年度の同時期より減少(昨年度:542本)、ここ最近から見ても減少傾向である。東京都漁連によれば、天草の着床には1月〜2月に海水温が13℃以下となることが必要だが、今年は水温が高かった為ではとのことであった。天草の着床率が低いことは、その間に雑草が着床していくことになり、雑草の混成率も高くなってしまう。環境は商品にも影響を与えると感じた。倉庫を見てもガランとしていて若干寂しい物があり、第二回目の入札は通常は7月に行われるが、今回は8月となりそうとのことであった。
天草の様相は各浜で異なっており、それを元に入札値の概要を決めていく。最終的には実際に確認して、例年通りかどうかをチェックする。確認してみると同じアラメでもある浜では太めが多く、ある浜では細めが多いことが分かる。また毛先の短いものもあれば毛先が長いものもあった。生育海域の水深や海流が関係しているとのことであった。全体に今年度は青が多く感じられた。東京以外では静岡県入札しか確認していないが、全国的な傾向だろうか。
入札は静岡県入札と同じく13:30から行われた。参加社は10社。今年度は4月5月が寒く、業界自体に若干活力が少なく感じられた中、予想外の値がついた天草もあった。必要とされているところではやはり必要なのであろうかと感じた瞬間であった。後の入札の価格に影響を及ぼしそうである。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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今年度の状況を同業者と話し合う
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03 2010/06/23 徳島県第1回入札会
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今年初めての全漁連共販入札会が徳島で開かれた。出品量は20トンと例年よりは少なめであるが、昨年の12トンよりも増産となった。静岡県や東京都における第1回の出品量が減産であった為、増産は業界としても喜ばしいことである。
徳島には前日入し、出品される天草を確認した。静岡県や東京都で出品された天草は青が付着したものが多く感じられたが、今回徳島県で出品された天草は青が少なく感じられた。黒潮の流れが関係しているのであろうか。次に続く、愛媛県と三重県の入札で何か傾向がつかめるかもしれないと感じた。
乾燥の度合いも購入する上で重要なファクターとなる。全体的には良く乾燥されていたが、一部の浜は若干湿っており、予定価格を再検討させて頂いた。
また漁連の方の話しによれば、工場の建設やタンカーの座礁により環境が変化しているとのこと。天草は天産物であり、天草から作られる「ところてん」や「寒天」は日本の伝統産業である。しっかりとした環境アセスメントを実施し、本当に影響がないかどうか把握した上で、着手して貰いたいと思う。
入札業者は8社であり、札締めは11時でその場で開票された。前回の入札に引き続いて、価格は買いに走ったと感じられた。今年はこの傾向が続くのか。次の愛媛県入札はかなり考えるところである。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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天草を確認する
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04 2010/07/02 愛媛県第1回入札会
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第1回愛媛県入札が7月2日に開催された。今年の出品量は約60トンであり、昨年度とほぼ同量で(昨年度:約65トン)、減少傾向はやや収まった感があった。ただし、H20年は約80トンであった為、以前と比較すると減少していることに変わりはない。
愛媛には前日入りして朝から確認した。全体的に徳島県の天草と同様、東日本の産地(伊豆半島、伊豆諸島)と比較して青が少なく感じられた。内湾の産地でも青はあまり確認されなかった為、黒潮よりは水温が関係しているのだろうか。胞子に関しても東日本産の天草ほどは確認されていない為、東日本産の天草と西日本産の天草では生育が異なるのか。
産地毎に天草を確認していくと、豊後水道に面した地域では天草の枝葉は細かく生い茂っており、瀬戸内海側では細く長い様相となっていた。お客様には好みがあるので、これらの特徴を加味して、それ相応の天草を仕入れていく。いずれにせよ、青が少なく、乾燥の度合いが良いものは歩留まりがよいので良質の天草である。
入札業者は10社であり、札締めは12:30でその場で開票された。前回の入札ほどは買いに走った感は無かったが、やはり若干その傾向が感じられた。今年度の相場が徐々に固まりそうである。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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産地毎に天草を見付けていく
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05 2010/07/09 三重県第1回入札会
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今年も昨年とほぼ同時期の7月9日に松阪市の三重県漁連ノリ流通センターで天草入札会が開催された。昨年は7トンとかなり少なかったが、今年は若干増加して11トンであった。例年の収穫量と比較すると少ないが、それでも他地域と同様、減少傾向は収まった感がある。また、昨年度の秋に熊野沖でフェリーが座礁したが、三重県の天草についていえば、影響はなさそうであるとのこと。
ノリ流通センターには午前中に入り、いつも通り出品される天草を確認した。確認内容は草の太さ、細かさ、カキの付き具合や青の混入具合、乾燥の度合い等である。全体的に西日本の産地(徳島県、愛媛県)と比較すると若干、青やフケが多く見られ、胞子を保有している個体も確認された。草の太さは異なるが、生育環境は東日本(伊豆諸島、伊豆半島)の産地と似ているのではと感じた。
入札は13:00より参加社9社で開始された。入札方式は他地域と異なり、1品毎に端末でキーを打ちながら実施する。この為、1品の入札値が次の入札値に影響を与えてしまう場合が多く、今回は若干その傾向が見られた。徳島県入札や愛媛県入札の影響を受け、昨年よりも若干買いの傾向が見られた。弊社は適度な量を購入することができた為、良い結果となったといえた。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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産地毎に天草の状態を確認していく
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06 2010/07/14 静岡県第2回入札会
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例年通り、静岡県の第2回入札会が7月中旬に開催された。出品量は177本、4287kgで昨年の同時期と比較するとかなり少ない(昨年826本、20605kg)。東日本では生育が悪いとのことだが、それが生産量に影響しているのであろう。次の日に開催される東京都入札会が今回開催されないことからも生育が悪いことが伺える。
天草の見本は前回現地周りをした際に収集しているので、それを参考にすることができる。この為、今回は現地周りを実施せず、前回収集した情報とサンプルで状況を確認することにした。サンプルを比較すると、採取した浜が異なっていても、形状がよく似ている天草が多く見られた。これらの天草に対してゼリー強度や粘度を測定してみると、値も比較的似ていた。こういったことを考慮すれば、生産量が少なくなっている浜に対応することができるのではと感じた。
入札は午後13:30より行われた。業者は8社であり、内4社がFAX入札であった。入札値はこれまでの流れを受けて若干買いに走った感がした。全体的に採取量が減少しているが、今回の値をみて、採取業者に意欲が戻り、採取量が増えていくことを期待した。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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07 2010/7/29 神奈川県城ヶ島漁協第1回入札会
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昨年と同様、7月の最終週に城ヶ島の入札が開催された。城ヶ島においても静岡県や東京都と同様、採取量が少なかった(今年1092kg;昨年1290kg)。地産地消が言われる中、各産地の採取量が少ないのはやはり寂しい。
城ヶ島に入ると猛烈な雨の洗礼を受けたが、ここまで凄い雨は久々のようだ。梅雨明けからずっと晴れていて猛烈に暑かったらしい。愛知県もこのところ夏日が続いており、全国的にも暑い日が多いようだ。暑くなればトコロテンの需要が増える。これを機に、天草の需要も増え、各地の生産量が増加すればよいと感じた。
実際に天草を確認すると、他の東日本地域同様、さほど大きく成長しておらず、割合短い状態で胞子を持つ個体が確認された。青草はいつも通りか若干多く感じられた。
15年〜20年くらい前まではヒジキと天草で生計が立てられるほど、天草の採取は盛んで、カジメという海藻を削除して天草の生育場所を作っていたそうだ。そのような生育場所の保全も今後考えていかなくてはならないことである。
入札は5社で実施され、当社が落札した。入札値は他地域と同様の傾向であったが、まずまずの結果といえた。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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城ヶ島の天草を見付ける
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08 2010/08/04 長崎県漁連第1回入札会
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8年ぶりに長崎入札へ出向いた。
昨年、一昨年の生産が5〜7トンと少なくFAX入札で対応していたが、今年から現場出席が条件となった。今年の数量は8,752kgとやや多くなっている。
長崎県は海域が広く、北は対馬から西の五島列島、南は島原半島まであるが天草の主産地は五島列島の南端、福江島、三井楽になる。今回、三井楽で5,850kgと全体の70%弱になる。三井楽産天草は九州地域では一番の格付けになっている。また、いままで相対取り引きで漁連入札に出なかった対馬の品が今年は1,100kg出ている。
7月17日ごろから梅雨明けして以後、全国的な猛暑が続き、ところてん需要が伸びている。今までの全国各浜の生産量は昨年並みのところが多く、供給が需要に追いつかないことが予想され、相場は対前年比20%〜25%高で推移している。
今日の応札業者は地元長崎で2社、鹿児島から1社、それに当社を含め本州から2社の計5社であった。
入札会は築40年の漁連共販所で行われ、水曜日が休みの「煮干し、いりこ」の入札会場に天草入札会を挟んでの開催であった。
長崎県での海藻類では天草のみが入札方式でほかの「ひじき」「ふのり」等は相対取り引きをしているとの話であった。
10時に見付け開始、11時30分に札締め、12:00過ぎに発表。結果は予想通り昨年比20%〜25%高となった。
天草買付も中盤から後半に入りつつあり、いままでのところ数量不足の感はいなめない。
台風が発生していないので水揚げには好都合であるが、需要が活発なので今後も高値が予想される。
国産のみでは不足となると海外産に一部シフトも想定していかなければいけない。
(報告/社長 森田庄次)
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長崎県漁連入札見付会場
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09 2010/08/11 三重県第2回入札会
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今年も昨年とほぼ同時期の8月11日に松阪市の三重県漁連ノリ流通センターで天草入札会が開催された。昨年は5トンでとかなり少なかったが、今年は若干増加して7トンであった。例年よりは少ないが、減少傾向は収まったように感じた。
ノリ流通センターには午前中に入り、いつも通り出品される天草を確認した。確認内容はいつもと同じで、草の太さ、細かさ、カキの付き具合や青の混入具合、乾燥の度合い等である。今回出品される天草は様々な等級があり、更に同じランク付けされていても(例えば上天とランク付けされていても)、カキや青の付き具合が異なっており、良く観察する必要があった。この点を明確にして使用用途を明確にし、札値を検討した。今回はトコロテン用の天草以外に寒天用の天草も必要であったので、その点を考慮して検討した。全体的にいえば、海水温の影響か、若干青が入っていた。一方で胞子を保有している個体はあまり確認されなかった。
入札は13:00より参加社10社で開始された。入札方式は他地域と異なり、1品毎に端末でキーを打ちながら実施する。この為、1品の入札値が次の入札値に影響を与えてしまう場合が多いが、今回はその傾向は見られなかった。落札値は全体的に第1回入札会の価格と同等であった。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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10 2010/08/11 和歌山県第1回入札会
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今年も昨年と同時期の8月11日に和歌山県第1回入札が開催された。しかし、今回は出品量が少なかった為、松阪市の三重県漁連ノリ流通センターで三重県入札終了後に開催された。昨年は15トンであったが、今年は6トンで激減。他地域の傾向とは異なり、収穫量が激減したのは昨年の秋に熊野沖でフェリーが座礁した事の影響であろうか。
和歌山県の天草は寒天の水込み用の天草として使用するもの多い。今回もその目的で購入する予定であったが、水込み用の天草の比率が少なかった。水込み用の天草は業界用語でサルクサと呼ぶが、寒天に硬さを付与する重要な草である。故に寒天を製造する企業から多く求められるが、ここまでサルクサの出品量が少ないことは考えものである。今年の寒天作りにはちょっと工夫が必要になるかもしれない。
入札は三重県入札終了後の14:00より参加社10社で開始された。入札は一品一品札値を記入していく方式である。マクサに関しては、今年の傾向から推察したとおりの値段で落札されたが、オニクサは通常より高値で落札されたように感じた。お盆前の入札は本日で終了、次はお盆後の伊豆・東京の入札会である。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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11 2010/08/18 静岡県第3回入札会
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例年通り、静岡県第3回入札会が8月中旬に開催された。出品量は630本、15,750kgで昨年の同時期とほぼ同量であった(昨年627本、15,600kg)。第2回入札会での出品量が激減していたので、今回も少なくなるのではとの懸念があったが、昨年並みであったので一安心である。相場の上昇により採取業者の意欲があがった為と考えられる。
今回は稲取地域のみを視察したが、総じて良く成長していた(一部の地区では若干成長が緩やかになっていたと感じたが)。出品量については今後もありそうだとのこと。やはり相場の上昇が影響を与えているのであろう。年度の初めでは生産量を懸念していたが、一安心である。下田の漁協についてからは他地域の天草も確認した。須崎、仁科地域も良く成長していたが、やはり伊豆地域全体で言えば例年より青が多いと感じた。
入札は午後13:30より行われた。業者は8社であり、FAX入札は2社であった。入札値は第2回入札会とほぼ同等であった。この結果を受け、採取業者も意欲が戻っていくと思われた。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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伊豆・稲取地域の海
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12 2010/08/19 東京都第2回入札会
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静岡県の入札会に引き続いて東京都の入札会が8月中旬に開催された。出品量は406本、12,202kgで昨年の同時期と比較して増産となった(昨年360本、10,750kg)。第1回の出品量は減産であったが、相場の上昇による採取業者の意欲向上がこの地域でも現れたと思われた。特に第1回で激減していたアラメの出品量が多く、今回の注目の商品である。
漁連に着いてからはいつも通り出品される天草を確認した。同じアラメでも産地の違いにより、細かさや太さが異なっており、出品量と合わせて考慮しなくてはいけない。アラメについては個人的には、粗すぎず細かい方がノリが出やすく、濾過もしやすいので良いのではと考えている。カキの付き具合は同じ産地でも等級により全く異なっており、例えば1等と別1等でもかなり付き具合が異なっていた。事前に検討しておいた値から、これらのことを考慮して札値を検討する。今回出品された天草は青が少なく、青と等級がついていても、さほど青は気にならない商品が多かった。
入札は13:30より11社で実施された。第1回入札では買いに走った値段がついたが、今回も次回以降の出品量が不明確であった為、買いに走った値段がついたと感じた。因みに今後の東京都の入札日程は10月を予定しており、例年行われる9月の入札はないとのことである。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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伊豆諸島の晒天草
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13 2010/08/31 徳島県第2回入札会
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例年9月初めに開かれる徳島県漁連第二回入札会が今年は8月31日に開かれた。8月も終わるというのに異常に暑い。空を見上げれば入道雲が湧き上がり真夏を思わせるほどである。
今回の入札業者は5社。出品量は14トン弱、去年の第二回の8.5トンと比較して増産である。第1回の20トンと合わせると今年は34トン。去年一年の20トンと比べても多い。今年は梅雨明けが早く猛暑が続き、ところてん需要が強まったため業者の買い付け意欲が高まった感がある。その影響で相場が低かった去年に比べ今年は高相場で推移していることも生産者の採取意欲が湧いたのではないかと推察される。
県漁連の人の話をいろいろと聞きながら見付けを開始。今回は第1回の入札会の後に採った天草もあり、アオの混入、付き物の量など注意深い見付けが必要になる。入札札締め切りは11時。即発表。他の入札会同様第1回より1割ほど高めで終わり、主だったものは弊社が落札した。来週に控える高知と愛媛の入札会を考えるとこれがどんな影響を及ぼすのか。落札してもしなくても「展開だよ展開、展開を読まなくっちゃ。まぁ人のやることだ、うまくはいかないわな」なんて声が聞こえてきそうな入札会であった。
(報告/専務 森田智治)
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徳島県漁連倉庫内の天草
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14 2010/09/08 高知県第1回入札会
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例年通り、9月第1週に第1回高知県入札会が開催された。入札量は19トン、他地域では増産している中、昨年より3割ほど減産である。地元の業者によれば今年度はあまり育っておらず、ほそく短かったらしい。4月の時点でかなり短かったとのこと。更に採取業者の高齢化が減産につながったのであろう。因みに東日本の草も冬期の海水温の関係であまり育たなかったとのことである。むかいの和歌山でも減産であるので、黒潮も関係しているのであろうか。
入札会場にはいつも通り、前日入りして倉庫に置かれた現物見本を確認した。高知の草は徳島の草と比較すると割合毛足が長い(徳島は細かい傾向)。これは徳島ほど海岸線が複雑で無い為か。各々確認していくと綺麗な天草が多く、「取り草」と「拾い草」でも大きな違いはなかった。一方で「混じり」と格付けされている草でも、あまりサル草*が混合していなかったものもあった。良く確認して値札を考慮した。カキの付着状態は西日本の他地域と同じく、少なかった。乾燥状態も各々異なっていたので、これらのことを考慮して札値を決めていく。全体的に胞子を保有個体はなかった。
入札業者は6社で入札は2回に分けて行われた。第1回は三津から出品された天草のみで実施された。落札者のみの発表で札値が発表されない。このことが第2回の札値に大きく影響した。全体的に今年の傾向通り、買いの傾向で高知県入札会は終了した。今回の影響が明日の愛媛県入札に影響を与えるであろう。
*サル草:他地域ではドラクサやオテンと呼ばれている。使用すると硬さがでるので寒天製造時に重宝する。煮え具合は他の天草よりも先に炊くことが多く、水込み草と呼んでいる。
http://tengusa.jp/infomation/tengusa.html
http://tengusa.jp/reports/sakuin_tengusa.html#sakuin_t12
(報告/研究室長 森田尚宏)
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15 2010/09/10 愛媛県第2回入札会
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去年同様、昨日の高知県入札会に続き今日は愛媛県第2回入札会。暑さが続くとはいえ全漁連共販入札会もこの愛媛をもって終了となる。残る入札会は静岡県と東京都のみとなった。昨日の高知県入札後に、全漁連担当者と業者3人の4人で去年と同様レンタカーを使って高知から愛媛へ四国縦断。夕方愛媛県入り。運転手役のO氏、お疲れ様でした。
出品数量は去年の4.6トンに比べやや増産の8.1トン。通年では去年と似た70トンとなった。ただ全国的傾向でもあるのだが寒天、ところてんブームの影響を受けた平成18年を除けば年々減産減少傾向になっているのは心配なところである。
漁連の人の話を聞きながら見付を開始。第1回の時の入札業者は10社だったのが第2回ということもあって今回は6社。入札会場に運び込まれた見本も心なしか数量的にも少し寂しい。
札締めは12時、即結果発表。昨日の高知の結果を受けたこともあってかほとんどのものが第1回の落札値を上回った。今年はどの入札会もすべからく去年より高値、また第1回よりも第2回のほうが高値、といった結果となった。
(報告/専務 森田智治)
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愛媛県漁連倉庫内の天草見本
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16 2010/09/15 静岡県第4回入札会
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入札会もいよいよ終盤に入ってきた。先週までの暑さはなくなりさわやかな風が吹き始めた今日は、静岡県の第4回入札会。この後は静岡県で2回、東京都で1回の入札会が予定されているのみである。
今回の出品で伊豆半島東海岸ものがほぼ終了となる。春に採取されたもの、夏にかけて採取されたものが混在。付き物の多さ、天草の成長度合等注意深い見付が必要になる。今回の出品量は674本、17トン弱。その内伊豆半島西海岸の小下田漁協のものが全体量の75%を占め12.5トンほど。小下田の天草は赤草、トラ晒、晒等に区分されそれがまた採り草、寄草、一等、二等にランクがわけられるので品種銘柄が実に多く、何にいくらの値をつけていいのか困惑してしまうほどである。
入札業者はファックス入札を含め8社。1時半の入札、結果は落札値とその業者を発表。今年の相場の流れからすればある程度の高値がつくと予想されたが一部の品種についてはそれ以上の高値がつき会場内にどよめきがおきるものもあった。業者によって必要なものとそうでないものの差が見事に表れた結果となった。
「より高く、より強く」これに「より速く」が加わればオリンピックの標語になってしまうなあなんて思う、そんな入札会であった。残された入札会にどのような影響が出るか予想が難しくなってきたことは確かである。
(報告/専務 森田智治)
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入札会場に並んだ出品天草見本
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17 2010/10/07 神奈川県城ヶ島漁協第2回入札会
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昨年と同様、10月にも城ヶ島の入札が開催された。今回は1047kg(内、赤草981kg)で1回分の入札量としては少ないが、昨年よりは多かった(昨年896kg)。年間を通してみると2139kgで昨年とほぼ同量である(昨年2186kg)。天草全体の価格が上がっていることや、夏日が多く続きトコロテンの需要が増えたが、まだ採取業者への意欲には影響を及ぼしていないようだ。
城ヶ島についてからはいつも通り、入札会場へ歩いて向かった。夏に入ることが多いが、今回は秋。いつも感じている暑さはなく快適であった。天草を確認すると、毛草とアラメの割合が前回と異なり、アラメが多く含有していた。アオの付着具合としては他の東日本地域同様、少なかった。カキも少なかった。
入札は5社で実施され、当社が落札した。入札値は他地域と同様の傾向であったが、まずまずの結果といえた。
余談だが、城ヶ島ではアカモクという海藻の利用が研究されている。今回、その研究者が入札会場に来場されたので、現段階の研究結果について教えていただいた。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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18 2010/10/20 静岡県第5回入札会
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いつまでも暑い日が続いていたがさすがに10月、さわやかな秋風が吹きぬけるようになった。今日の下田は時折雨も降る少し肌寒い日、季節の移ろいを感じさせる日となった。
今回の出品は2227本55350kg。去年の同時期の1570本39137kgと比べると4割ほど多い。前回までの高値相場をみて、生産者の採取意欲が増したのかもしれない。全国的に減産が多いなか、ここ静岡県伊豆地方だけは異例である。その内西伊豆ものの仁科浜が15トン弱、同じく八木沢が33トン弱、合わせれば全体量の86パーセントを占める。前回の小下田といい、西伊豆には天草の不漁というものがないのだろうかと思ってしまうほどである。今回は入札品目が119品と多く、見本もそれにあわせて当然多い。とはいうものの、同じ銘柄品種が何口もあり一つの見本に何枚もエフが付けられている。今回も前回の小下田同様、採り、寄り、晒し、トラ、雨当り、1等、2等など多種多様のため入念に時間を掛けて見付をすることとなった。
入札業者はファックス入札を含め9社。いつものように1時半入札、発表。あまりに多い品目のため途中休憩をはさみ2回に分けて発表された。高値傾向が続いていたがここにきて少し落ち着きを取り戻し、前回と同じような落札値がついた。これは今日の静岡の入札に続き、明日の東京都の入札が控えていることも影響しているのかもしれない。
ともあれ、今年の入札会は明日の東京都と11月の静岡県のみとなった。
(報告/専務 森田智治)
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多く並んだ天草見本・晒見本が 目に付く
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19 2010/10/21 東京都第3回入札会
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昨日の静岡県の入札会に引き続いて東京都の最終入札会が行われた。昨日も大幅な数量増になっていたが、今日も938本28トンとなり、前回9月予定の入札会を中止したとはいえそれを補って余りある数となった。
これは7月17日の梅雨明けからの好天、加えて台風の接近が少なく採取環境が非常によかったことがあげられる。さらに夏の猛暑の影響でところてんの需要が多く、昨年比30%から40%程度価格上昇したことも生産者採取意欲が高まり増産になった。
漁連の当初6月の予想発表では今年の作柄は極端に悪く、第1回の10トンにプラス10トン程度かと思われていたのが、ここに至って累計56トンとなり昨年の53トンより多くなった。
特に大島では波浮地区が多くなったのであるが、春のものより品質がやや落ちるのはやむを得ないところである。特にカキがまつわりついているのが顕著である。(写真上)
新島、式根島では晒の上品が多く出されて夏の天候による晒作業の好調さがうかがえる。(写真下)
応札社は10社、1時半から開札。
価格は一部、生産者希望値より低い価格が入り取引不成立により来年に持ち越し品が出るかと思われたが、予想に反して比較的高値で全量さばかれた。
これで来春からのところてん、寒天の原料価格は今年の各地落札価格平均をとれば前年対比20%程度の上昇となる模様である。
入札後、漁協の生産者と買い付け業者、総勢20人ほどで意見交換の場がもたれた。
水深10mほどに繁茂しているヒラクサの採取による潜水病にかかった人の話、適切な産地表示指摘のこと、海外からの輸入品(韓国品の滞貨予想、モロッコの輸出制限強化)のこと、ラニーニャ現象による今冬の気温、来春の販売環境の見とおしなど個々の発言があり3時半すぎに散会となった。
(報告/社長 森田庄次)
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カキ(白くみえる)が 付着しているのが判る
新島、式根島の晒品
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20 2010/11/17 静岡県第6回入札会
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例年通り、静岡県第6回入札会11月中旬に開催された。今年度の最終入札である。出品量は591本、14,757kgで昨年の同時期より多かった(昨年396本、9,900kg)。年間を通しての出品量は5109本(127,234kg)と昨年よりも増加した4475本(111,411kg)。4回目入札までは昨年度より出品量が少なく、入札値が上昇、そのことが採取業者の採取意欲に影響し、最終的に出品量が増加したと考えられる。
今回は直接下田に出向いてサンプルを確認した。仁科浜のテングサが主に出品されているが、銘柄の分類方法はその都度異なっていた感じがした。例えば、「仁科汐まくさ青2」という銘柄はグリーンに変色した感じで第3回は出品されていたが、今回はグリーン色に変色した感じではなく、青がより多く付着した感じであった。グリーン色に変色したテングサは「仁科雨あたり」の方であった。また、「仁科汐まくさ三等」は通常よりも多くサル草が含有しており、「仁科汐まくさ青」はサル草があまり含有しておらず、青のみが付着していた感があった。また、田子は青が多かったので、やはり伊豆地域全体で言えば例年より青が多いと感じた。
入札は午後13:30より行われた。業者は7社であり、FAX入札は2社であった。入札値は前回と同等であった。この結果が来シーズンの入札値に影響していくと思われる。
(報告/研究室長 森田尚宏)
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21 2010/11/22 平成22年度(平成22.4〜平成22.12)てんぐさ概況
全国のてんぐさ入札(生産)量
平成22年は入札数量 *は推定値、平成21年以前は生産数量(入札数量+入札外数量)です。
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* 推定値 (単位:トン)株式会社 森田商店 調べ 2010/11/22
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今年のてんぐさ入札会は平成22年11月17日、静岡県第6回入札会をもってすべて終了した。第6回は、仁科浜中心で14,700kgの出品、価格面では前回の10月20日より上品が9%、並品が6%ほど下落した。8月以降高くなりすぎた分、少しの揺り戻しであった。
今年の生産量は推定460トン、前年対比約17%減、一昨年対比約31%の減産となった。これは寒天ブームの平成17年から19年の3年間平均923トンと比較して半減、平成20年以降3年続きの減少である。平成22年3月に静岡県で25トンの入札があったがこれは漁連の会計年度処理上平成21年に計上してある。実務上は平成22年度に計上した方が理にかなっているが、それでも485(推定)トンにとどまる。
数量減の原因は例によって価格低迷による生産者の採取意欲の減退が大きく、さらに1月から2月にかけての海水温、13℃以下が適正温度であるの対し、今年は暖冬影響で高かったのが作柄不良につながった。これは東京都伊豆諸島、千葉県房総半島で顕著にみられた。
このことにより価格面では今年の入札開始時期の6月時点で昨年比20%ほどの高値で取引され始めた。一方7月に入ると全国的に早い梅雨明けで、7月17日から猛暑続きの日となった。この天気は約2カ月続き平成4年以来の記録的な熱い夏となった。ちょうど心太の需要期と重なりそれまでの数量減が大きく影響し入価格が30%〜40%上昇する産地、銘柄まで出た。価格上昇が以後、数量増に寄与したところがあるが、それでも昨年より少ないままで終わった。
この数量減を補ったのが輸入天草、おもに韓国産である。今年の9月までの輸入は韓国の524トンを含む合計1,248トンで昨年1年間の韓国275トン、合計1,151トンを大きく上回った。済州島の天草で特に滞貨していた2007年産が推定300トンほど日本に入荷した。これで韓国の滞貨品もかなり消化され、一方、国内の天草の不足分を十分補ったといえる。
平成22年12月から天然寒天の製造が開始されるがラニーニャ現象により寒い冬が予想され、寒天製造業者の生産意欲は高まっている。
なお、全国数量確定値は平成23年3月末に報告予定である。
(報告/社長 森田庄次) |