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\. 寒天・てんぐさの科学
@ 食感は数値で分かる
A 寒天質はテングサの形状で決まる
B 生育環境がテングサに影響を与える
C 生育時期がテングサに影響を与える
D テングサに付着しているカキの影響
E カキの付着量が製造に影響を与える
F 寒天の離水率について

E カキの付着量が製造に影響を与える

 天草の科学Dでは天草に付着するカキがpHを上げることを述べました。では実際にこれが製造にどのような影響を与えるのでしょうか。今回はこれについてご報告いたします。

《目的》
・「天草の科学D」の項で記述したように、カキの付着は煮熟溶液のpHをあげる。天草は若干pHを下げた方が煮熟しやすくなる為、カキが多く付着すると煮熟しにくくなる。
・本項では実際にどうなるか確認した。

《方法》
・カキの付着したサルクサ10gに水道水1200mlと食酢を添加して煮熟、ゼリー強度・粘度を測定する。
・食酢の添加量は14mlと16mlで実施する。
・試験区@:カキ付着少ないサルクサ。食酢は14ml添加。
・試験区A:カキ付着が多いサルクサ。食酢は14ml添加。
・試験区B:カキ付着が多いサルクサ。食酢は16ml添加。

《結果》
・試験区@と試験区Aを比較したところ、ゼリー強度,粘度共に試験区@の方が高かった。試験区Aは試験区@より煮熟仕切れなかったと考えられる。これは試験区Aはカキ付着が多く、試験区@よりpHが下がらなかったと考えられる。
・試験区Aと試験区Bを比較したところ、ゼリー強度,粘度共に試験区Bの方が高かった。試験区Bの方が試験区Aより煮熟できたと考えられる。両試験区共にカキ付着が多いが、試験区Bの方がより食酢添加量が多かった為、pHを下げることができた為と考えられる。
・以上より、カキの付着が少ない場合は食酢14mlでも可能であるが、カキ付着が多い場合は食酢16ml必要であった。つまり、カキ付着が多い場合は強く炊く必要があることとなる。

  試験区@
カキ付着少ない
食酢14ml添加
試験区A
カキ付着多い
食酢14ml添加
試験区B
カキ付着多い
食酢16ml添加
ゼリー強度(20℃) 471gc 279gc 549gc
粘度cp(60℃) 14.3cp 8.19cp 18.8cp

カキ:サンゴモ類が活動することにより起きる現象(サンゴモ類が細胞壁および細胞間隙に炭酸カルシウムを沈着することにより、石灰化した体を作っていく現象)。サンゴモ類は紅藻綱サンゴモ目に属する海藻の総称。カキが付着していることは炭酸カルシウムが沈着していることである為、アルカリ性に傾き易く、煮熟しにくくなる。もちろん微量である為、人体には影響がないが、カキの付着が少ない方が炊きやすくなる。

参考文献:大野正夫編著「有用海藻誌」『(株)内田老鶴圃』

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