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\. 寒天・てんぐさの科学
@ 食感は数値で分かる
A 寒天質はテングサの形状で決まる
B 生育環境がテングサに影響を与える
C 生育時期がテングサに影響を与える
D テングサに付着しているカキの影響
E カキの付着量が製造に影響を与える
F 寒天の離水率について

B 生育環境がテングサに影響を与える

 天草は全国で採取されますが、各々形状や性質が異なっています。今回は産地と形状・性質の関係をご報告いたします。
 ただし、漁協関係者に影響を与えることを考慮して、詳細な産地は省略させて頂きます。

《試験目的》
・天草の生育環境(生育地、生育時期、水温等)は天草の形状や含有する寒天質に影響を与えている。
・この為、各産地の天草からゲル状の寒天を作り、そのゼリー強度と粘度を測定し、生育地との関係を確認した。

《試験方法》
・マクサを水で洗浄し、枝葉や太さ等形状を確認した。産地は高知県の室戸岬東海岸側(産地A)、高知県の足摺岬西海岸側(産地B)である。産地Bのマクサはサルクサに形状が似ていた為、高知県産のサルクサも試験を実施した。
・マクサ10gに水1000mlと食酢12mlを添加して煮熟、ゼリー強度と粘度を測定した。サルクサはカキが付着しており、強く煮熟する必要があった為、食酢を16ml添加した。

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《結果と考察》
・形状を確認したところ、産地Bのマクサは毛先が短く細かく生い茂っていた。サルクサも同様であったがカキが付着していた。一方、産地Aのマクサはいわゆる一般的なマクサで毛先が長い感があった。

《産地A:室戸岬・東海岸側》

《産地B:足摺岬・西海岸側》

《サルクサ》

・粘度を測定したところ、産地Bのマクサとサルクサが高かった。特に高かったのはサルクサの18.8cp(60℃)であった。産地Bのマクサは14.6cp、産地Aのマクサは8.2cpであった。
・ゼリー強度を確認したところ、最も高かったのはサルクサの549gc(20℃)であった。産地Aのマクサは494gc、産地Bのマクサは481gcであった。
・触感を確認したところ、サルクサはかなり柔らかかったが、粘りがあり、脆くはなかった。産地Bのマクサも粘りがあったが、しっかりしていて中身がぎっしり詰まった感じであった。産地Aのマクサはこの中では硬めであった。
・粘度の割合がゼリー強度と比較して高いと粘りがあるゲルとなる。今回も粘度が高い産地Bのマクサは粘りが有り、粘度が低い産地Aのマクサは硬い傾向であった。
・サルクサはかなり柔らかかったが、ゼリー強度が高かったのは、粘度が高く、なかなか試験ゼリーが破断しない為と考えられた。
・枝が太く、毛先が細かい天草は寒天質が多くとれると言われている。本試験では最も弾力があり、しっかりしていたのは産地Bのマクサであった。形状が似ていたサルクサはかなり弾力があったが、触感は異なっていた。
・海岸の形状を確認すると足摺岬の西海岸は地形が複雑なのに対し、室戸岬の東海岸は長く一様な海岸である。地形が複雑であることは海流も複雑になると考えられる。地形が天草の形状に影響を与え、結局寒天質にも影響を与えると考えられた。

※お客様の好みは様々です。本試験は天草の違いを検討しているのであり、優劣は検討していないことをご了承ください。

  天草の様相 抽出された寒天の
ゼリー強度(20℃)
抽出された寒天の
粘度(60℃)
触感
産地Aマクサ
室戸岬・東海岸側
長い 494gc 8.2cp 硬め
産地Bマクサ
足摺岬・西海岸側
短く細かい 481gc 14.6cp 硬めであるが
弾力有り
サルクサ 短く細かい
カキ付着
549gc 18.8cp 最も弾力有り

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